『Oblivion Tale 〜第一話 拾い物〜』*4
作:kousaka−saguru


「ほれっ」

ルーカは見張りに壊れたライトを渡す。

「それはなんですか?」

見張りはそれを受け取りながら、最初彼が持っていなかった巨大な荷物を指差した。

「ああ、これか……実はな、一番奥の建物の近くに落ちてて気にいったから拾ってきちまった」

見た目はまるで瓦礫。形こそ整っているものの、なぜ必要とするかはわからないような代物だ。

「そうですか、建設作業中だったころの残り物ですかね? う〜ん、まぁ別になくなってて困るような物じゃなさそうに見えますし、私達もそういう必要なさげなものを撤去するように言われているんです、それに協力してもらったと思えばいいですかね」

彼はそう自分を納得させるように語り、持ち出し許可を出す。

「そうしておいてくれ、今日はこんな夜にすまなかった……ところで、奥のあれは何だ?」

奥のあれ……屋上の死体の事だ。

「いえいえ、こちらこそ軍の英雄と呼ばれる貴方に会えてよかったです……あれは軍機密ランクSですのでさすがに……」

「ありがとう。英雄だとか、そんなこと言われても今のオレはただの退役軍人さ」

そう言ってルーカはその場を後にする。その後ろで見張りは彼の後ろ姿に敬礼していた。
見張りの行動に彼は気付きながらも、しばらく足を引き摺って団地のある山を下り、少し行った所で、ルーカは肩に担いだ大きな瓦礫に見える物を下ろす。
それは内側から力を加えられると音を立てて瓦礫みたいなそれの内側から手が生えた。
さらにもう片方の手が出てきてそれがどんどん瓦礫みたいなそれを破壊していく。

「暑いです、狭いです、揺ます!! まさかこんな物の中に入れられるとは思いませんでした……」

そんな文句を言いながら少女は額に浮かんだ汗をシャツの袖で拭った。
こう見ると普通に辺りにいる子供と何の変わりも無いので、彼には尚更、何故あんな所にいたのか理解できなかった。
言いながらも、観察していることを誤魔化すために彼は少女の言葉に返答する。

「まぁ、他にいい物も無かったからな、仕方ない。それよりだ、改めてだがお前は誰だ?」

彼が問い掛けると少女は警戒心剥き出しな表情をして振り向いて来るのだが、しかし、返事がなかなか返って来ない。

「………………わからないです……名前は……」

狼狽え、頭を手で抱えてまで思い出そうとしているようだが、それでも出てくる気配を感じなかった。

「えーと、もしかして本当に記憶喪失か?」

悪い事を聞いてしまったと思い、彼が頭を下げると、彼女は目に涙を溜めながら記憶喪失を認める。

「……うぅっ……そうみたいです」

その答えにルーカは困ってしまい、子供も困ったようで二人はその場で考え込んでしまった。このままだと延々と悩むことになるだろうが、その時、彼の頭を一つの案が過る。

「……おい、お前もし来るところがなければオレの家に来るか? まぁ、酒臭くて汚いんだが……それが嫌なら一泊分くらいホテル代を貸してもいい」

親がいるのかもわからない相手が不憫だという安い同情からだが、それでも、ここで別れて何か事があったら大変だという意識もある。彼にとってそれは軍人だった頃からの心構えだということもあるだろう。

「いえっ! それはさすがに迷惑かけてしまいます、大丈夫ですよ……一日くらい野宿でも……さっき殴ろうとしてしまいましたし」
しかし、少女はそれに遠慮してなのか即座に否定する。表情……ルーカであっても読みにくいものだったが、相手の好意を無下にしたくないと言いたげな迷いが見えた。

「それくらいなら気にする必要は無いが……そういえばもしかしなくてもオレは怪しい人間だな。その上名前も名乗ってないか、オレはルーカだ、とりあえず……宿くらい取ってくれて構わん、オレは金に困っちゃいないから」

「そういうことじゃないんですけど……」

少女は目の前の男との心配の焦点の違いに少し悩むものの、結論する。

「だったら貴方の家で……お金を貸してもらうのは気が引けます」

「そうか、ならついてきてくれ」

そう言って彼はゆっくり歩きだす。少女はその後ろを歩いていった。

「ここがオレの家だ、中は酒の臭いが充満してるしとても汚いからホテルがよければ言ってくれ」

ルーカが玄関の扉を開ける。空けた途端、中から酒の臭いが外へ外へ流れていった。

「うっ……」

それに子供は一瞬顔をしかめるもののすぐに平静を取り戻し笑う。

「これくらいならなんともないです、すいません、一日お世話になります」

実は彼女にとって精一杯気を張った笑みだが彼は気付かない。

「ああ、自由にくつろいでくれ、まぁ……飯っぽいのはカップめんくらいしかないが……」

そう言いながら記憶を思い起こす彼を尻目に、少女は家に入って行く。覚悟を決めたような表情をして。

「おじゃまします」

「それじゃ、オレは出てくよ、こんな爺がいたんじゃくつろげないだろ?」

だからルーカがそういった時、彼女は間の抜けた顔で振り向いたのだ。

「へっ? ……あう……身体を求めたりするつもりじゃないんですか!?」

カアアッと顔を赤くして子供が尋ねる。それをルーカは不思議なことを言うと言いたげな顔で見た。
見られて子供は余計に顔を赤くする。

「なんでオレが身体を求めるんだ? ……そこまでオレはエロく見えてるのか?」

ルーカはひたすら不思議そうだ。

「えっ……あの……見た目はそうじゃないんですけど……さっきからオレの家とかホテルとか言ってるしタダなんて……男の人ですし……」

少し首を傾げるも、彼は笑い、玄関から外に出ようとする。

「……まぁそんなことしないよ、オレ今から出てくさ、くつろいでてくれて構わない」

そう言ってルーカは出て行き、彼女は一人家に取り残されてしまった。

「えーと……私どうすれば」

ルーカが出て行って数分、子供は何もすることが無く、仕方ないので掃除をすることにした。
掃除の技術は高いのか床にゴロゴロと転がっていた酒瓶や脱ぎ捨てられた服、ごみの類が次々と無くなっていく。しかし、無くなっていくのは少しずつやることが無くなっていくことで、家の中が完璧に綺麗になるとやることが本当に無くなった。
人様の家で勝手に掃除するのもあまりいいことではないのだがこれはこれで仕方ないが、詰まる所、子供にはやることが無い、娯楽を楽しもうにも遠慮が働いてしまう。
結局謙虚に部屋の隅で衣服を変えることなく寝てしまった。



*3<<
>>*5