『アリシア・エドワールは夢を見る』第二話
作:緑野仁



「メリー。……メルラン・ランスエロット!」
「は、はいぃお嬢様ぁ!」
「遅いわよ、何やってたのよ」
「えーと、着替えてたんですけど……」
「あなたが着替えていようが何だろうが知ったこっちゃないわ。召し使いは主人の下にさっさと来るものよ」
「いや、着替えてないのはまずくないですか?」
「いいわよ、そんなの。どうせだったら少年誌みたいに着替え中でハプニングとか起こったりしなさいよ」
「何の話ですか、何の」
「まああなたのドッキリうっかりハプニングなんてどうでもいいわ。また大事件が起きたのよ」
「何でしょうか。……大体予想は付きますが」
「夢を見たのよ」
「ですよね……で、どんな夢だったのですか?」

「そこは広い砂漠だったわ。私は冒険家になっていて、隣にはあなたがいたの」
「本当ですか? それは光栄です」
「荷物持ちとしてね」
「……」
「そのまま歩いていると、見るからに美形なよく食べそうな男が倒れていたの」
「どっかで聞きましたね、それ」
「で、まあそいつもあなたに持たせてそのまま街へ向かったの」
「荷物扱い!? ていうか何でまた私!?」
「ところがそこの宿で食事をしたら、そいつがよく食べるのよ」
「さっき自分でよく食べるって言ってましたしね」
「私は64皿、アイツはなんと62皿も食べたのよ」
「いや、食べ過ぎですし。お嬢様の方が多いですし」
「ちなみにあなたは水とパンだったわ」
「なんですかその最低限の料理は? 私は生きてるんですか?」
「辛うじて」
「辛うじて……」
「まあそこでケンカになって勝負することになったのよ」
「予想は出来てます、勝負形式を言ってください」
「大食いよ」
「ですよねー」
「熾烈な戦いだったわ。3日みば……」
「お嬢様、そこは飛ばしてくださって結構ですので」
「そう? まあいいわ。その時、太った男が出てきたの」
「おお、新キャラですか。盛り上がってきましたね」
「めんどくさそうだったから、あなたに任せたけど」
「そりゃないですよお嬢様」
「辛うじて生きてたせいで、勝負は互角だったけどね」
「えーと、勝負形式は?」
「一本勝負武器制限無しルール無用のタイマン勝負」
「何でそこだけバトルしちゃってるんですか……」
「いいじゃない、あなた強いし」
「確かに少しは棒術をかじっていますけども……」
「まあ、辛うじて生きてたせいで互角だったけどね」
「どれだけ鬼なんですか……少しは助けてくださいよ」
「まあそんなこんなで、大食いは私が勝ったわ」
「はしょりましたねぇ」
「あなたは負けたわ」
「負けたんですか!? どうにかしてくださいよ!」
「で、私は二つに増えた荷物を馬に乗せて次の町に向かったの」
「荷物あつかい!?」
「そんなこんなしてたら、私は城下町に着いていたわ」
「またずいぶんはしょりましたねぇ……」
「とりあえずそこで要らない荷物を捨てて、テントを買ったの」
「要らない荷物が気になりますが……」
「ああ、あなたじゃないわよ。男の方」
「どっちでもダメですから」
「で、なんだかんだでテントを何かしたら、」
「はい」
「魔神が出てきたの」
「はい!?」
「魔神は3つ願いを叶えてくれると言ったわ」
「いや、あの、急展開すぎて理解しかねます」
「ちなみに、『何度も叶えてくれ』システムは無効だったわ」
「いえ、知りませんから」
「というわけでまず最初の願いで、」
「はい」
「お腹一杯ケーキを食べれるようにしてくれ、と言ったの」
「ああ、お嬢様らしい願いでよかったです。なんか安心しました」
「なんか腹立つわね……で、二つめの願いで、」
「はい」
「あなたを生き返らせたのよ」
「ていうかまず死んでたんですか」
「大丈夫、棺桶の状態だったから」
「どこのRPGですか」
「そして3つめの願いを言おうとしたら、」
「はい」
「そこで目が覚めたのよ」
「あらま」

「それは不幸でしたねぇ。何か叶えてもらえたかもしれなかったのに」
「そうよ。願いの効果は絶大だったしね」
「はい? どういうことですか?」
「まず、2つめのお願い」
「はい」
「今あなたは生き返ってるから、本当に叶ったことになるわ」
「まず死んでませんが」
「そして1つめ」
「ふむ」
「これもあなたが叶えてくれるはずよ。期待しているわ」
「嫌ですからね、絶対に嫌ですからね」
「というわけで3つめの願いは何にしようか考えてるのよ」
「なるほど……しかし、夢の中だったのならもう入れないのでは?」
「そうね、だからもう一回寝るわ」
「はい?」
「願いを叶えてくるのよ」
「お嬢様、今10時ですから。起きなくちゃいけませんから」
「もちろん、勝手に起こしたらわかってるわね? おやすみー」
「……魔神様、どうかお嬢様が早起き出来るようにしてください……」


「ところで、3つめの願いであなたのセクシー着替えシーンを出させるっていうのはどうかしら?」
「いやですよ、だいいち文じゃ表現できないじゃないですか」
「そう? 残念ね。じゃあ代わりに私が……」
「いや、あの、お嬢様。ムリはいけませんから。そんなのロリコンぐらいしか喜びませんから」
「あら、言ってくれるわね。試しに見てみる?」
「え……? ちょ、ちょっとお嬢様、そんな過激な……!」
「……あら、メリー? どうしたの? ものすごい鼻血だけど。……メリー?」



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