『アリシア・エドワールは夢を見る』第一話
作:緑野仁



 それは、どこぞの世界のいつぞやの時代のなんとか言った国の話。私たちの世界でいえば、多分中世とかヨーロッパとか言うらへん。その国には、引きこもりがちのお姫様がおりました。

 そのお姫様の名前は、アリシア・エドワール。これは、そのお姫様と召し使いの話。


 こっちでいうなら、11月10日らへん。

「メリー、……ちょっと来て、メリー!」
「お呼びですか、お嬢様」
「メリー、……メルラン・ランスエロット」
「えーと、わざわざ本名で言ってくださってありがとうございます。……だれかに説明してるのですか?」
「そんなことはどうでもいいわ。実は、今日とても重大なことが起きたの」
「――それは何でしょうか、お嬢様」
「実は今日……」
「はい」
「夢を見たの」
「……はい?」
「最近滅多に夢を見なかったから、その奇妙なことについて話したかったの」
「えーと、他には重大なことというのは?」
「ないわ」
「あ、そういえば私お部屋の掃除が残っていました。早く済ませなくては」
「そんなの後にしなさい。さもなくば給料減らすわよ」
「わかりましたなんでもききますからそれだけは(早口)」
「私、あなたの素直な所が大好きだわ。それで、夢の話なんだけど」
「はいなんでもいいですからおきゅうりょうだけは(超早口)」
「……しつこいのは嫌いよ」


「えーと、夢の話でしたね、お嬢様」
「そうよ」
「どんな夢だったんですか?」
「……その夢には、1人の勇者と一頭の大きな竜が出てきたの」
「ふむ、なるほど。で、勇者がお嬢様だったんですよね?」
「いえ、私は竜だったの」
「……はい?」
「それで、勇者を食べたの」
「……え、えーと、お嬢様。話の展開が早すぎます」
「おいしかったわ」
「いや、聞いてませんから」
「そしてその後、私は、ゆっくりとご飯を食べていたの」
「……」
「するとそこに、魔王が現れたの」
「おお、真打ち登場ですね。そこでもちろん、」
「ええ、食べたわ」
「……あの、お嬢様? 話がシュールすぎやしませんか?」
「夢だからしょうがないわ」
「……ま、まあ夢だからしょうがないですね」
「魔王もおいしかったけどね」
「……」

「そういえばその後、もうひとつ夢を見たわ」
「……えーと、嫌な予感しかしませんがどうぞ」
「その夢には、1人の女の人が出てきたの」
「あの、その夢に竜は出てきましたか?」
「失礼ね、今度は私がその女の人だったのよ」
「ああ、なんか色々と安心しました。よかったです」
「何を勝手に心配したの……? まあいいわ。それでその女の人は色々な町を回っていったの」
「ふむふむ、なんか今回はマトモそうですね」
「そしてその女の人は、行く先々の食事屋を食い潰していくの」
「お嬢様、一回食べ物ネタから離れませんか?」
「夢だからしょうがないじゃない」
「ああはい、夢だからしょうがないですね……」
「そして50軒目ぐらいの時、ある男の人に会ったの」
「いや、あの、どれだけ食べてるんですか」
「その男は、見るからに美形な感じで、しかもよく食べるの」
「ああ、なんだかようやくマトモな感じに……ちょっと気になるけど……」
「もちろん私はその男と戦ったわ」
「すいません前言撤回します」
「その戦いは三日三晩続いたわ……」
「いや、ていうかどうやってバトルしてるんですか」
「勝負の結果、彼は62皿、私は64皿で何とか勝ったわ」
「ああ、いや、予想は付いてたんですけれどもね」
「でも、その時に私の体は限界に近づいていたの」
「ただ単に食べ過ぎなだけじゃないですか」
「そこで私は願ったの……神様、私がもっとご飯を食べれるようにしてください、と」
「十分食べてるじゃないですか」

「そして、そこで目が覚めたのよ、メリー」
「それは壮絶な夢でしたね……主に食事方面で」
「さてメリー、これで私の言いたいことがわかったかしら?」
「へ……? えーと、どういうことですか?」
「神様は、最後に私がお腹いっぱいになれるようにしてくださったの」
「はあ……」
「だから、今日の朝ごはんをシェフに増やしてもらって来なさい」
「まず理屈がおかしいし、それにしても私に言うのはおかしくありませんか」
「ふむ、そうかしら……? あなたならやってくれると思ったのに」
「何ですかその無駄な信頼は……言うなら直接シェフに言ってくださいよ」
「むぅ、やっぱりムリか……だったらやる事は1つしかないわね」
「へ? 何ですかそれ?」
「もう一回寝るわ」
「……いや、あの、お嬢様、今10時……」
「ちなみに起こしたら給料減らすから。おやすみー」
「……お嬢様ー!?」



>>第二話