『十神十色 生死編U ―生の神―』
作:璃歌音


*3

 娘もずいぶん大きくなったころ、二人目までできた。
 もちろん、産むことにした。
 上からは何も言われない。上位の神々は、わりと下の世界のことには無頓着なので、まだ気付いていないのかもしれない。だが、「彼」は気付くはずだ。仕事が、ワタシと直結している「彼」には、わかるはずだ。
 でも、何も起きない。

 ある日、娘を連れて公園に遊びに行った。
 娘は、神と人の間の子であるにもかかわらず、いや、むしろそうだからか、すくすくと元気に育っていた。今日も、ボールを追いかけて遊んでいる。ワタシは、ベンチに座ってあの子の弟、あるいは妹をワタシを通して優しく撫でる。
 ――と。
 ボールがころころと道路に向かっていく。
 それを追いかける娘。
 ワタシが、危ない、と思ったときにはもう遅かった。
 真っ赤なスポーツカーがものすごいスピードで突っ込んでくる。
 ダメだ、間に合わない――。



 何が起きたのか。
 思わずつぶっていた目を開けると、道路には娘ではなく、高校生くらいの少年が倒れていた。
 車は、既に去っている。
 が、その車よりも濃い、強い赤が、少年を包んでいる。少年の口元は、ほんの少し、笑みを浮かべているようにも見えた。
 嘘よ……。
 こんな人間が……。
 ワタシの生んだ人間が、こんなことをするなんて……。



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