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『何故解通−ナゼトキツウ− 導入編』 作:武士道さむらぃ 「こんばんは」 ウサギは静かに笑い、漆黒へと誘う。 そして扉が開かれた― 10月23日午後4時、楠田探偵事務所に一本の電話が入ってきた。 「はい、楠田探偵事務所です」 楠田は受話器を取り、そう答える。 「おめでとうございます。アナタは見事当選しましたのでパーティーにご招待します」 向こうからは女性の声が響く。 「パーティー、ですか?」 楠田は受話器を片手に懸賞イラストロジック「ナゾトキ」の雑誌を探しだし、賞品一覧を指でなぞる。 『ナゾトキパーティー……4名様』 「ああ、コレですか」 楠田はようやく理解をする。 「ええと、これは―」 「深夜零時にお迎えにあがります」 そのまま電話は切られてしまった。 「……イタズラですかね」 楠田は一人そうつぶやいた。 そして午前零時、ドアを叩く音がする。 一応眼を開けておいた楠田は扉を開く。 たてつけの悪い扉がギギギと音をたて、月の光が妖しい影を映す。 黒い服にシルクハット、そこから飛び出た長い耳、それはまさに 「……ウサギ?」 楠田は思わず口にする。 「綾崎、と申します」 ウサギは綺麗な声で名乗り、軽くお辞儀をした。 「楠田、と申します」 楠田も反射的に名乗る。 「では、こちらへ」とウサギが車を示す。 漆黒の車、中からはほのかに光が漏れていて、闇の中でも黒が映える。 楠田がウサギの方へ向き直すと、ウサギは不意に自分の顔の下に手を添えた。 そして、強く力を加える。 すると、ウサギの頭は鈍い音をたてて、取れた。 楠田はその場に凍り付く。 ウサギの頭のあった場所から水滴が落ちる。 まるで命がこぼれ落ちるかのように。 「ふう、着ぐるみは暑いですね。汗が溢れてきました」 綾崎は火照った顔を冷たい風で冷やした。 長い髪がたなびくその姿は美しく、そして可笑しくもあった。 彼女はウサギなのだから。 「何故そのような格好を?」 楠田は気になって尋ねる。 全てを知りたくなるのは職業柄、といったところであろうか。 「このパーティーは不思議の世界をイメージしています。雰囲気作りも大切ですからね」 綾崎は再びウサギに変身した。 「では、行きましょうか」 ウサギに誘われ、楠田は車に乗り込んだ。 エンジンを蒸す音が閑静な夜の街に響き渡る。 楠田はその深い闇に飲み込まれていった。 「ナゾトキっていうからには何かクイズでも出されるというわけですか?」 楠田はふと浮かんだ質問を唱える、が ウサギは「ふふふ」と笑うだけで話そうとはしない。 楠田は何度か同じ質問を繰り返したが、とうとう諦めて他の質問をする。 「じゃあ他には誰が来るのですか?」 ウサギは黒い本を取り出した。 そして最初のページを開く。 「一人目は桜坂 ナナさん。あの桜坂グループの社長令嬢ですね。才あふれる方でグループの中でもかなりの発言力を持っています」 ウサギはそのまま次のページに視線を移す。 「二人目は紀野 正さん。大学二年生ですね。大学では生物学を専攻しているようです」 ウサギはページを一つめくった。 「三人目は佐手 月さん。宇宙工学を研究しているそうですね。特に人工衛星が専門だとか」 ウサギは本から顔を上げ、楠田を見た。 「四人目はアナタ、楠田 陽さん。そして―」 ウサギは最後のページを開く。 そこで車が停まった。 「着きましたね、ご自分で確認した方が分かりやすいですよ」 車のドアを開き、ウサギが楠田をエスコートする。 「ようこそナゾトキパーティーへ。存分にお楽しみ下さい」 まだ暗い空を、屋敷を、月が妖しく照らしていた。 |
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