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『Hi!Jack!』 作:璃歌音
登場人物 ・竜一(りゅういち) 男。中一。あだ名はジャック。 ・謙太郎(けんたろう) 男。中一。竜一の親友。 ・運転手(うんてんしゅ) 男。三十六歳。バスの運転手。 ・祐(ゆう) 女。高二。バスジャック犯。 ・晴香(はるか) 女。二十一歳。メイド。 ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ $ ¥ 運転手 えー、本日は夕日バスをご利用いただき、誠に有難う御座います。このバスは、市役所を経由して、なんやかんやで駅まで参ります。 照明がつく。 バスの車内、竜一、謙太郎、祐の三人だけが乗っている。 竜一と謙太郎は雑談をしている。 と、祐がいきなり立ち上がり、ふところから拳銃をとりだす。 祐 て、手を上げろ!ハイジャックだ! しばしの沈黙の後、竜一が振り返る。 竜一 呼んだぁ? 祐 は? 竜一 今、Hi!ジャック!って。 祐 ・・・・・はあ? 謙太郎 こいつ、ジャックっていうんですよ。 祐 外人か? 謙太郎 いや、あだ名ですよ。れっきとした日本人です。 祐 どうしてまたそんなあだ名を? 謙太郎 オレとジャックが小1のときに国語の授業で「ジャックと豆の木」を読んだんですよ。その時こいつが、何故か 竜一 「ジャックがかわいそうだよぉ」 謙太郎 ってぼろ泣きしたから、オレがつけたんです。 祐 なんで、「ジャックと豆の木」でジャックがかわいそうなんだ? 謙太郎 さあ?あ、ところで、ジャックになんか用ですか? 祐 は? 謙太郎 さっき、Hi!ジャック!って。 祐 ああ、もう!そうじゃなくて!・・・バスジャックだ! 運転手 はあああああ!!!??? 運転手が振り向き、他の三人が口々に「危ない!」「前を向け!」などと騒ぎ、運転手は急いで前を向く。 運転手 はあ…。そんな迷惑なことやめてくださいよ。 祐 いや、バスジャックする人間が迷惑とか考えないとおも 運転手 (遮って)あーあ。今日は帰ってマリオパーティやろうと思ったのに。 謙太郎 おお。自分のバスがハイジャックされていると言うのに、すごい落ち着きようだ。 竜一 呼んだぁ? 謙太郎 呼んでない。 運転手 で?なんでまたバスジャックなんか? 謙太郎、竜一を見る。 謙太郎 あ、バスジャックには反応しないんだ。 祐 オレは、この腐った日本に革命を起こしてやろうと思ったんだ。だからバスジャックだ! 祐以外 (長い沈黙)………なんで? 祐 ……あれ? 運転手 あぁーあ! 祐 なんだよ!そんなあからさまな「だめだこりゃ」っていうため息つくなよ! 祐、運転手に拳銃を突きつける。 運転手 また物騒なもんとりだして。どうせおもちゃでしょ。 祐 いや、これはほんもの 竜一 (遮って)最近えあがんとかいうので本物そっくりなのもあるんでしょ? 謙太郎 そうらしいね。まあ、素人が本物をそう簡単に手に入れられるものでもないしね。 祐 いや、これはちゃんとネットで買って 竜一 おなかすいたー。 謙太郎 ああ、今日の給食野菜ばっかだったからなー。お前、ほとんど残しただろ。 竜一 うん。僕野菜嫌い。 祐 雑談するなぁー! 運転手 で?要求は? 祐 えっと、えっと、とりあえずこのまま進め! 運転手 はいはいっと。 謙太郎 もしかして、バスジャックしたあとのこと、なにも考えてなかった? 祐 う、うん。 竜一 あぁーあ! 祐、口を開くが、謙太郎に遮られる。 謙太郎 もう飽きたから同じツッコミはいれないよーに。 祐 うぅ…。(半泣き) 竜一 まーまー。 謙太郎が唐突に携帯電話をとりだし、電話をかける。 謙太郎 あ、母ちゃん?オレ、今日は帰るの遅れそう。…ん?いや、バスがハイジャックされたの。 竜一 呼んだぁ? 謙太郎、竜一を手で制し、電話を続ける。 謙太郎 …え?ああ、大丈夫大丈夫。なんか犯人どーしよーもないからなんとかなるでしょ。 祐 ど、どーしよーもないっていったな! 竜一 まーまー。 謙太郎 うい。じゃねー。(電話を切る) 運転手 次はー。市役所前ー。 祐 (すかさず)停まるのか? 運転手 ウチのバスはね、なんでか知らんが市役所前のバス停だけちゃんと停まったかGPSだかなんだかで確認されてて、そこ通過しないと警備会社がなんだかんだで追っかけてきちゃうんですよ。あ、それともバカなバスジャックはさっさとやめて警察行きます? 祐 やめろ!!…じゃあ、そのバス停だけは停まれ。 運転手 了解しましたー。 バスが停まる音。 すると晴香が一人乗ってくる。晴香の服装はメイド喫茶でありそうなメイド服。 竜一 あー。めいどさんだー。 謙太郎 犠牲者が増えたね。 祐 手を上げろ! 晴香 はい?(一応手は上げる) 運転手 あ、メイドさんだ。 またも運転手が振り返り、全員が「危ない!」とか騒ぐ。 晴香 あの、このバスはいったいどういった状況なのでしょう? 謙太郎 このおバカさんにハイジャックされてるの。 竜一 呼んだぁ?b 謙太郎 呼んでない。んで、こいつはジャックっていうあだ名だからハイジャックって言うと反応する。 竜一 呼んだぁ? 謙太郎 呼んでないって。バスジャックって言えば無反応だから大丈夫。 竜一 …… 晴香、竜一を見る。 晴香 はあ。 運転手 で。どうするんですか?さっさと警察行きましょうか? 祐 やめろ! 晴香 この方はどうしてハイ…バスジャックなんてなさっているのですか? 祐 うう…。 運転手 腐った日本を変えるために、バスジャックだ!って。 晴香 ………なんで? 祐 うぅ…。(半泣きリターンズ) 竜一 まーまー。 晴香 まあ、とりあえずわたくしで良ければ詳しいことを話していただけませんか? 晴香、祐を座席へ促す。二人が座る。 祐 オレは、小さい頃から男になりたかったんだ。…でも、親にはお前は女なんだから女らしくしなさいって言われるし…。むちゃくちゃ男らしくなれば認められると思ったんだ。 竜一 認められないよね? 謙太郎 認められないだろうね。 祐、二人のやり取りは耳に入らず、続ける。 祐 それで、ネットの掲示板でどうやったら男らしくなれるか聞いてみたんだ。 竜一 それでそれで?(わくわく) 祐 変な書き込みもいっぱいあったけど、ひときわ輝いてて、目に飛び込んできた書き込みがあったんだ。 竜一 どんなどんな?(わくわく) 祐 バスジャックでもすればいいんじゃないかって。 沈黙。 運転手 で、それを信じたわけだ。 竜一と謙太郎が立ち上がり、漫才っぽく話し出す。 竜一 僕ねぇ、この前掲示板でどうやったら男らしくなれますかって聞いてみたの。そしたらね、「バスジャックでもしてみろ」って言われたんだよ。 謙太郎 ばかお前、そんなの冗談に決まってるだろ? 竜一 えぇ!そうなの?? 二人、祐をじっと見る。 祐 えっ。 晴香 祐さん、苦労してきたのですね…。では、わたくしもお手伝いいたします! 謙太郎 なんでそうなるの! 晴香、祐よりもものすごい拳銃をとりだす。 謙太郎 なんでそんなの持ってんの! 晴香 ご主人様にもしもの時に使えと渡されました。 竜一 ご主人様って、お店に来るお客さんのことだねぇ。いっぱい来るんでしょお? 晴香 はい?わたくしのご主人様は一人だけですが。 祐 え?あなたが働いてるのって……。 晴香 この町で一番大きなお屋敷です。(誇らしげに)住み込みで働かせていただいております。 謙太郎 もしかして…? 運転手 本物!? 運転手が振り向き、おなじみの騒動。 運転手 本物にしては、服装が派手すぎないか? 晴香 よくわかりませんが、ご主人様が「メイドに絶対領域は不可欠だ」と。 運転手 ああ、やっぱりその人はあっちの方面のメイドを求めてるよ。 竜一 ねえねえ、「ぜったいりょーいき」ってなに? 運転手 うん、知らない人は知らないままでいい。 晴香 さてと、では祐さん。わたくし、晴香と申します。よろしくお願いします。 祐 はあ。 晴香、運転手に拳銃をつきつける。 晴香 では、高速に乗っていただけますか?(冷) 運転手 は、はいぃ! 謙太郎 うわ!あの運転手さんが一発で言うこと聞いた! 竜一 めいどさん、すごいねー。 祐、愕然としている。 晴香 祐さん! 祐 はい! 晴香 これからどうするのですか? 祐 さ、さあ? 晴香 ………? 竜一 祐さんねぇー、なんにも考えずにハイジャックしちゃったの。……呼んだぁ? 謙太郎 一人でやるな。 晴香 …なんてことを。 祐 え? 晴香 バスジャックをするというのに、ろくに計画も立てないなんて!あなたはばかですか! 竜一 そう。ばかです。 祐 うぅ…。(半泣きビギンズ…違うか。) 竜一 まーまー。 謙太郎 自分で泣かせて自分で慰めるな。 運転手 あの、特にやることもないんなら、もとのルートに戻りたいんだけど。 祐 いや、でも… 運転手 今日はね、別れた妻と暮らしてる娘の誕生日なんですよ。今日くらいは一緒にご飯を食べようって約束してて、会社の方とも話つけて、早めに帰らせてもらえるはずだったんですけど、この調子だと…。 晴香 そうだったのですか…。 一同、申し訳ない&せつない感じのムードに 運転手はちょっと考えてから 運転手 ま、嘘だけどね。 祐 なぜそこで嘘をつく!そしてなぜすぐばらす! 竜一 だよねー。さっき帰ったらマリオカートやるっていってたもん。 謙太郎 お前も変なこと覚えてるな。 竜一 あ、マリオパーティだった。 謙太郎 どうでもいいわ。 晴香 で。どうします?祐さん。 祐 えっと、えっと。 竜一 もう帰りたいよぉ。おじゃる丸が始まっちゃうよぉ。 謙太郎 お前おじゃる丸毎週見てんのか。 竜一 だっておもしろいじゃん。 謙太郎 …まあいいか。 晴香 どうするんです? 祐 うんとぉ、えっとぉ、んーとぉ… 運転手 はっきりしろよこらぁ!!! 運転手、立ち上がり祐につかみかかる。 一同、振り向いた時の五倍大騒ぎ。(当社比) なんだかんだで晴香が運転。 運転手 お前のわがままのせいでなぁ!こちとら多大な迷惑こうむっとるんじゃい!はっきりしろやごら!! 祐 うわああああああああ!!! 祐、恐怖のあまり運転手を撃ってしまう。 運転手、倒れる。 運転手 や、やるじゃねぇか。 竜一 運転手さぁん! 竜一、運転手をかかえわんわん泣く。 運転手は意識を失う。一同、呆然。 祐 う、うわああああああああああああああ!!! 祐、恐怖のあまり窓から飛び降りようとする。 謙太郎が止める。 謙太郎 ちょっと!ここ高速だから!きちんと自分の罪を償え!! 祐 なんで、なんでオレはハイジャックなんかぁ!!! 竜一 (何故かのんびりした声で)呼んだぁ? 謙太郎 呼んでない!! 暗転 明転、バスの座席に運転手と女の子が座っている。 女の子 それでそれで?その運転手さんはどうなっちゃったの? 運転手 実はね、なにを隠そう、その運転手さんは、パパなんだよ。 女の子 え!?すごい!!…じゃあ、助かったんだね? 運転手 そうさ、そうじゃなきゃパパはここにいないさ。でも、本当にぎりぎりでね、お母さんも病院に駆けつけてくれて、それをきっかけに再婚できたのさ。 女の子 さいこん? 運転手 まあ、そのうちわかるさ。 女の子 祐さんは?祐さんはどうなったの? 運転手 うーん…。おまわりさんに捕まったんだろうけど……。その後どうなったかは知らないな…。 女の子 そっかぁー。でも、そんなに悪そうな人じゃないみたいだし、元気だといいね! 運転手 そうだなー。 祐 (声のみ)失礼します!車両の点検に参りました! 運転手 あ、作業員さんだ。どうぞー! 作業服を着た祐が入ってきて、点検を始める。帽子を深くかぶっているので運転手は祐だということに気付かない。 運転手 まあね、ハイジャックなんてするもんじゃないよ。 祐が作業の手を止め、ふっと微笑みつぶやく。 祐 『呼んだ?』 運転手 なにか言ったかい? 祐 いえ、なにも。点検終了です。 運転手 あ、どうもありがとう。 祐、去る。 運転手は娘に話を続ける。 暗転
完
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