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『居そうで居ない、とある小説家のお話』 作:璃歌音 「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 「うるっせぇな! なんなんだよ!」 「いや、別に」 「はぁ?」 「なんかぁ……叫びたく……なった? みたいな?」 「お前ふざけてんだろ。あるいは馬鹿にしてんだろ」 「いや、別に」 「十秒前と全くセリフを吐くんじゃねぇ!」 「んー、うんにゃ、別に」 「微妙に変えても駄目だ!」 「……いやっはぁ! べっつぅにぃぃぃ???」 「やっぱり馬鹿にしてんだろ!!」 「……腹減らねぇ?」 「…………減った」 「飯行こうぜ」 「……ああ」 「って違ぇ! そんな場合か!」 「……そんな場合? どんな場合?」 「いやだから! 締め切りやべぇだろうが! 明日だろ! 正確にはあと3時間後だろ!」 「締め切り?」 「……殺されてぇのかオメェはっ!」 「いや、だってさ。そんな状況、読者は知らないよ」 「読者? って、なんかさっきからカタカタ打ってると思ったら、俺たちの会話を入力していやがったのかー」 「おお、なんという説明台詞」 「お前が言わせたんだろっがっ!!」 「だから、読んでる人には分からないって。これ、会話文だけなんだから」 「地の文まで書けこのエセ小説家!」 「やだ、めんどくさい」 「殺すっ」 「うわーやめろーたまたま落ちていたビニール紐で俺の首を絞めて殺そうとするなぁー」 「お前、器用だな」 「え?」 「首絞められながら説明台詞棒読みして、しかもそれをパソコンに打ち込むなんて芸当、なかなかできるもんじゃないぜ」 「おお、君も会話文だけでの説明にずいぶん慣れてきたようだね」 「お前は本当に人の神経を逆撫でしないと気が済まないみたいだな……」 「あーごめんなさいー」 「普通の言葉まで棒読みするなっ!」 「もうこれで出しちゃおうよ、短編」 「いや、無理だろ」 「いけるいける。はい。じゃ、校正開始。よろしくー」 「ったく、なんにせよ、今までの会話じゃ全然読者には状況わかんねぇだろ」 「と言いながらパソコンの画面を覗き込むQ君」 「いい加減地の文を書けっ!……誰だQ君って」 「よくあるだろ、純文学なんかで登場人物を頭文字で呼ぶやつ」 「日本人にQから始まる名前があるかっ!」 「あるかもよ?……くぉいずみさんとか」 「俺はなにも言わないからな」 「くぁんばらさんとか」 「……」 「く……く……くぃ……くぇ……」 「無いなら言うなっ!」 「何も言わないんじゃなかったのかよ」 「あぁぁぁぁぁ!!!」 「五月蝿いよ」 「黙れこのやろう! しかもちょっとかっこつけて書いてんじゃねぇ! 読めるか!」 「えー、編集者のくせにこんなのも読めないのー?」 「…………もう、これでいいからちゃんと書いてくれ。とりあえず、地の文で説明しろ」 「……」 編集者Qに言われて渋々書き出す作家Xであった。Xは作家でQは編集者であった。締め切り間近なのであった。QとXは幼馴染なのに担当と小説家という可笑しな関係なのであった。今度、短編を書かないといけないのであった。書けないのであった。すらんぷであった。もといスランプであったトランプではないスランプであった。お腹が空いたのであった。Qは厳しくて締め切りの日になったとたんつまり0時に書けてないと怒る。怖い。ぶぅ。……で、なんか頼んでもないのに手伝いに来てぇ、マジめんどくさいーみたいな? ……であった。 「お前は本当に作家かっ!?」 「えー」 「酷すぎる! あえて突っ込まなかったがあまりに酷すぎる! Qもそうだが、Xもおかしい! っつーか、お前のXのほうがちょっとかっこいいのがずるい! んで、なんだ! 『であった』つければすべて良しみたいな! いい加減にしろよ!」 「もう……いいじゃん、これで」 「っておい!」 「俺、腹減ったからラーメン食う。チキンラーメン」 「あのなぁ、仮にもプロの作家がこんな……」 「クォンも食う? チキンラーメン」 「あ、食う。ありがとクスダ」 クォンは韓国人なのであった。 「後付けにも程がある! 幼馴染の設定はどうした! っつーか、韓国だからって、そんな名前居んのか!?」 「探せばいるんじゃないかな。人種のサラダボウル、ニューヨークあたりに」 「韓国じゃねぇ!」 The End.
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