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『微分⇔積分』 作:武士道さむらぃ 「……。部宮徹はどうしたンだ? 最近は現れンようだが……」 「……つい先日、インターナショナル仮面にやられた、との報告が上がっております」 「インターナショナル仮面だと? また奴の仲間か! ええい、目障りな奴らめ……」 「……いかがいたしましょう?」 「わしが……この卑文様が直々に出向いてくれるわ!」 桜舞う 卯月の候 火衣靡く そよ風に 乱る花びら ひらひらと 中に見ゆるは 野を駆ける 白い翼の……ガッチャマン 「……迷ったの。それに何か違ったかの」 男は鬱蒼とした密林の中、とりあえず来た道を戻りはじめた。 「堕奄団子を一つ」 男は流行りの茶屋『奏曲扇』でしばし休憩をしていた。 堕奄団子というのは餅麺という生地を混ぜ込んだ喰甘風味で新食感の団子のことであり、最近の火衣狼たちのトレンドとなっている。 「へい。堕奄一つですな? てえくおふってのも出来るんですが、どうしやすか?」 店主は手をさすりながら返事を期待する。 何故ならてえくおふにランクアップさせると代金が8倍に跳ね上がるからだ。 「堕ちないどころか飛び立つ、ということであるか。しかし、てえくおふはなくともよかろう」 男はそう言って茶をすする。 店主は男に聞こえないように舌打ちをするが、しかし男は眉をひそめた。 店主はしまった、と決まり悪く苦笑いをした。 「……か、かしこまりやした」 結局店主はそう言い残すと、さっさと店の中に入っていった。 しばらくして店主は団子を二つ乗せた皿をよこした。 「堕奄は一つ2銭、二つで4銭でありやす」 そして何かをせがむように店主は手のひらを広げる。 「……ああ」 男は迷わずにその手を、握った。 そして軽く上下に振る。 「何の真似でしょう?」 「真似ではない。拙者は火衣狼であるからして手の汗にも4、5銭の価値があろうて」 刹那、店主は竹ぐしを投げ付けた。 その竹ぐしは真っすぐに男に飛んでいくが、男はひょいとそれをかわしてしまう。 くしはその真横を通りすぎ、道端にいた一人の男に突き刺さった。 「ぐあぁ。なンだこれは! さては貴様、インテンシブ仮面の仲間か!?」 店主は顔を真っ青にした。 いや、顔はおろか髪の毛の先までもを。 「び、卑文様!」 「……ン!」 卑文と呼ばれる男は店主を睨みつけた。 すると店主は、突然に萌えだした。 「ふン、まず一人。さて、あとは誰だったか。インテグラルとか言ったか」 団子を食べていた男はその言葉に眉をぴくりと動かした。 そして微かに口を動かす。 すると店主は萌えるのを止め、正気に戻った。 「……どういうことだ? 能力を使ったハズだが」 卑文は少しいらつきながら店主に問いかけた。 「卑文様、どうか先程のご無礼をお許し下さい。アナタ様に当てるつもりでは……!」 店主は必死に謝ったが、卑文は再び鋭い目つきで彼を睨みつけた。 店主はまた、萌えはじめる。 最初はその場で比較的静かに、しかし次第に店主は熱を発し、スパークまでもを始めた。 だがそれもしばらくすると止まってしまう。 「……ン。なンなンだ? もしや貴様の仕業か!?」 卑文はそういいながら団子を食べている男に目をつけた。 いらつきを解消すべく、そいつを睨みつける。 しかし男は、萌えない。 「……卑文とか言ったかの?」 団子を食べ終えると男はそっと立ち上がった。 「気に入らン。わしを知らンのか? 無礼な奴め」 卑文は腰の銃に手をかける。 「なぜ貴様は萌えない?」 「……そんな技、拙者には、な」 そのようなやり取りの中、店主は隙を見てさっさと逃げ出していた。 その場には卑文と男だけが、向かい合い対峙するように立っている。 「名を名乗れ」 卑文はそう問うた。 「我が名は……」 「ガハハ! 油断したな馬鹿めが! 火分砲!」 卑文はその名を聞くことなく銃弾を放った。 弾丸は炎を帯び男の居た辺りで爆発を起こす。 「ブザマだな。ガハハハ!」 卑文は高らかに笑う。 しかし背後から笑い声が聞こえた。 卑文の顔に焦りが生じる。 「我が名はインテグラル仮面。お主と相対する者なりて」 男は桜の木に寄り掛かっていた。 「いつの間に避けよった?」 「はて、いつだったかの?」 男は三度笠を放り投げた。 白い、躍動的なシルエット。 圧倒的なオーラ。 全てを支配する力。 そんなようなものが湧き出ているような気がするのは明らかに見間違いだ。 卑文はインテグラル仮面を再び睨みつけた。 しかし彼に変化などあらわれない。 「何故萌えぬ?」 「言ったろう。拙者は主と相対する者なりて」 「…カンゲン、か」 「であるな」 インテグラル仮面はふっと笑った。 次の瞬間には卑文の背後を取り、小さく呟いた。 「……貴様を真っ当に還元してやろう」 「ふン、こわっぱ風情が」 卑文はその姿を確認もせずに銃弾をぶっ放つ。 インテグラル仮面は後ろにステップし、距離を取った。 二人は互いに睨み合う。 その間も常に小声で呪文のようなものを唱えている。 あちこちで火が萌えては消え、萌えては消え。 その闘いは三日三晩にも続いたという。 そして最期の瞬間は呆気なくやって来た。 インテグラル仮面はマントを卑文に投げ付けた。 卑文は迷いなくそれに銃弾を叩き込む。 しかし、その向こうでインテグラル仮面は笑っていた。 「昔!」 ブーン! (卑文回想中) 「お主も過去は気高き領主であった。今こそ、その頃のお主に還元されるべきであろうて」 卑文は涙を流し、その言葉に頷いた。 「わしは、わしは……どうすれば?」 「ビブン仮面となるのが運命なりて。ともに参ろうか」 二人は堅く握手する。 どうやら通じ合ったようだ。 「おい、そこのお前ら。なんでうちの店だけ綺麗に焼失してんだ?」 物陰から現れた店主は店があったハズの場所を指差した。 「店は大地に還元されたまで。還元された大地は実りをもたらし、またお主に還元される。なんと喜ばしきことか」 二人は声を揃えて言った。 「あいや、しばらく!」 枝具町にはびこる悪は根絶された。 二人の火衣狼は無限にはびこる悪を片っ端から潰すべく、はた迷惑な正義を振り回し続けた。 崇楽の終わりの頃、ようやく全ては還元され二人の使命も終わった。 全ての悪を自分に還元して。 自分が元凶というのは値域外。 そんなの気にする火衣狼じゃない。 そこのけ火衣狼インテグラル! 騒がせ世界をセキブーン! 自分勝手はご愛嬌! とにもかくにもセキブーン! めでたしめでたし。 |
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