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『帰納法で大勝利』 作:武士道さむらぃ 「昨晩の事件ですが、どうやら……」 「……何? 俄臼が? ふン、どうせ油断でもしておったんだろう。しかし、そのナントカ仮面っていう奴、何者だ?」 「町人の間の噂によりますと、火衣狼の背衣をしていたとか……」 「火衣狼だと? ははン、そんな伝説信じよって、馬鹿な町人どもめ。しかし、このまま放っておくのもシャクだな。……アレを」 「……かしこまりました」 日が沈みかけ、辺りは夕闇。 赤く焼けた空も暗んで行き、そこに浮かぶは不吉な紅月。 妖しく照らすは野を駆ける三度笠の黒い影。 「あ、道間違った」 男はくるりと向きを変え、来た道をそのまま戻っていった。 「へえ、旦那が火衣狼? ハハハ、そんな冗談言ってもこの鬼能砲をタダで譲ることは出来んな」 町一番の銃売りの紀野峰 証は鬼能砲の値札を指差していった。 要するに代金をちゃんと支払えこの野郎、というわけである。 「しかしこのような物騒なものを買いにくる客も少なかろう」 三度笠の男はしばし証の様子を伺い、しかし納得して首を縦に振る気配もないのでこう切り出した。 「ならばこの風呂敷をやろうて。さあ、それを早く」 背中に纏っていた風呂敷を証に手渡して―むしろ押し付けて―そして鬼能砲を要求した。 「俺をからかってんのか? 誰がこんな薄汚い風呂敷を……」 証は三度笠の男を睨みつけ手におさまる程の小さな拳銃を構えた。 「さあ、とっとと帰りな。あんたの額に風穴が開く前にな」 「そうか、ならこの三度笠もつけてやろう……」三度笠の男は実るはずもない不毛な交渉を続ける気でいる。 証はその少しピントのずれた感じにただ呆れる他なかった。 そのようなやり取りの最中、店からほんの数十メートルの辺りで大柄の男が町人に厳めしい顔つきで物を尋ねていた。 「おい貴様、インテルグラフ仮面ってのはどいつだ?」 「インテルグラフ仮面? 存じ上げません、が……!?」 男はいきなり町人の頭のをその大きな手でむんずと掴み上げた。 「聞け、町人共! 俺ァ蝉禁蝉だ! 今すぐここにインテルグラフ仮面を連れて来い! さもなければ……」 蝉禁蝉は腕に力を込めた。 「あが、が、うぐぐぐぅ」 男は悲痛な悲鳴を上げた。 三度笠の男はそのごたごたに注意が移っている証の手から鬼能砲を奪い取った。 「置いとくぞ」 そう言うと男は笠も店の机の上に置き、そのまま店を出てしまった。 「お主、インテルグラフ仮面ではないが拙者が相手では不足かの?」 そこにはどデカイキャノン砲を携えた真白い男がいた。 よほど強さに自信があるのか、この屈強な男の前に立って尚も不敵な笑みを浮かべている。 「貴様が俺ァと戦うってのか? おもしろうわ何するやめ」 蝉禁蝉は突然うろたえだした。 男が抱えたキャノン砲の銃口は間違いなく蝉禁蝉を捉えている。 「我が名はインテグラル仮面。この世の悪を還元すべく参った。さあ、この鬼能砲を喰らうのがよかろうて」 きゅいいいいいいいん。 ガタガタガタガタ。 跡! ブーン! 鬼能砲から放出された紅蓮の光線は真っすぐに軌跡を描きながら蝉禁蝉へと直撃する。 蝉禁蝉は特に抵抗するでもなく、しごく平易に倒されてしまった。 「そこの者、無事か?」 インテグラル仮面は蝉禁蝉に捕らえられていた男の元に歩み寄った。 感動したのか男はふるふると震える手でインテグラル仮面にすがりつく。 「今の、で、死にそ……」 男はそのまま気絶してしまった。 よほど感極まったのであろうか。 「ふむ。命在る者はいずれ無へと還元されるものであろう。それもまた運命となるのであるな。」 「我も来た道を還るのが道理なりて。」 インテグラル仮面は野に続く方を振り返った。 「旦那、まさかこんなゴミくずで代金支払ったつもりじゃないだろうな?」 証は冷たい笑みを浮かべながらインテグラル仮面の肩を掴んだ。 彼の額にひやりと汗が滲む。 「あいや、しばらく!」 インテグラル仮面は証の腕を軽くはたき、逃れると、月へと続く妖しい野に向かって駆け出した。 厄介事を還元する厄介な英雄。 彼がもたらすのは吉か凶か? 今日も変わらず野を駆けろ! 輝け光線 跡ブーン! 世界が全て還るまで! 次回「たすきがけ!」もお楽しみにー。 |
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