『八猫伝』そのはち
作:璃歌音



「さて、ツサばあさん。ジアスたちは一体、何をしようとしてるんだ?」会議室に着くと、サターンが話を切り出しました。
「んむ、まずはやつらがどうして猫しか入れないはずのリキャット島にやってきているのか説明しよう。ガニメデやエウロパからなにか聞いてるかもしれないが、やつらは、磁場や空間を自由に歪めることができるのじゃ。……聞いてないか? まあ、いい。そこで、空間を歪め自分たちが住んでいる地域……ニッポンとか言ったかな? そこと、このリキャット島を一時的にくっつけて行き来していたというわけじゃ。そして、やつらはその瞬間移動の技術をより便利な、より快適なものにしようと、とても口には出せないような怪しい実験をしているのじゃ。それでもって、ここからがこの話の一番大切なところじゃから、よく聞けよ。そのジアスたち……正確にはジアス、フロン、ニカソの三人の実験で磁場や空間を歪める度に、そのしわ寄せのように一連の《おかしなこと》が引き起こされていたというわけじゃ」ツサばあさんが説明を終えると、みんな(ウラナスとネプチューンを除いて)が事の重大さにかたまってしまいました。
 話をよく理解できない二人は、マーズの必死の通訳的説明を受けていました。
「つまり、やつらは自分たちの欲望だけで俺たちの島をめちゃめちゃにしてるってことか? ……許せねぇ!」サターンは怒り狂っていました。
「よし! 早速やつらのアジトに乗り込むよ!」今にも飛び出しそうなサターンをマーズとマーキュリーがやっとのことで止めました。
「サターン、まだ準備が整ってないわ。第一、どうやってあの岩の中に入るの?」ジュピターもサターンをなだめます。自分の無鉄砲さに気付いたサターンは何も言い返せませんでした。
「あいつらは空間と磁場を操るんでしょ? こっちにはその二つ分野の専門家がいるじゃないの!」ヴィーナスが突然割り込んできて、すぐさまマーキュリーも参加してきました。
「ガニメデとエウロパのことですね。確かにあの二人ならやつらの謎のシールドを破れるかもしれませんね……」
「オレ、二人を呼んでくるよ!」そう言ってウラナスが飛び出していきました。早くこの深刻な空気から逃げ出したかったようです。
「それじゃあ、偉大なる研究者たちがシールドを破れたと仮定して話を進めておいてもいいよね」マーズが言いました。
「とりあえず、突っ込めばいいんだ!」やっぱりサターンが勢いよく言いました。
「そうだよね。どうしようもなくなったら、一時退却! とかすればいいんだから。別に、むちゃくちゃ急がなきゃいけないことでもないでしょ?」マーズが言いました。確かに、《おかしなこと》がいろいろと起こっていますが、時間がないわけではありませんでした。
 と、その時、部屋の中に謎の光がいくつもただよい始めました。
「な、なにこれ!?」ネプチューンが悲鳴をあげました。
「おお、時空妖精たちじゃわい。こいつらはとても気難しいやつらでの、わしが話しかけようとしているのも全部知っておりながら、無視しておったんじゃ。それをエウロパとカリストの力を借りて無理矢理わしらの時空……いや、世界と言ったほうがわかりやすいかな? ここにひきこんだわけじゃ。それ以来、甘えるようにわしのところに来るようになった。かわいいもんじゃよ」ツサばあさんが説明してくれました。
「それで、この時空妖精たちは今なんて言ってるんだい?」ジュピターが聞きます。
「ふむ。ふむふむ。ふむふむふむ。ふむふむふむふむ。ふ……そうか、ありがとな。ジアスたちがまた新しいことを始めたようじゃ。どこで知ったのかしらんが、エイトキャムライのことをかぎつけおっての、対抗策を練っていたそうじゃ。それで、お前達が持つ珠に対抗する黒い珠を作っていると……ん? いや、もう完成してしっまったようじゃ。その黒い珠は、冥界との扉を開くことのできる力を持っておると言っとるぞ」
「なんだって? それは大変だ!!」家の外から声が聞こえました。ドアを開けてウラナスと一緒に入ってきたのはガニメデとエウロパです。外で大きな声を出したのはガニメデでした。
「ウラナスから話は聞いた。そのシールドとやらは、空間を歪めることで作り出しているようだという結論に達したから、おれだけで充分だ。早速現場に行ってくるよ」エウロパはそう言ってすぐに出て行きました。
「まったく、落ち着きがねえな。ま、俺が言えることでもねえけど。さて、特に俺の出番はないみたいだし、とりあえず帰っていいか? ヒギエアに言葉を教えとるんだ。あいつは上達が早くて教えがいがあるんだよな。最近の騒動を話してやるとすごく喜ぶんだ。まるで自分が冒険してるみたいだってな」ガニメデはそう言って嬉しそうに出ていきました。
 だいたいの作戦を立ててキャムライたちは手持ちぶさたになってしまいました。そこで、キャムライたちはヴィーナスの提案で珠の力を引き出す訓練をしようということになりました。
 珠はそれぞれ違った精霊的な力を秘めているようでした。
 ジュピターの「さけ 」の珠は土の塊を飛ばしたりすることができました。マーズの「かつお 」の珠は炎を吹き出しましたし、マーキュリーの「あじ 」の珠は閃光を飛ばしました。サターンの「まぐろ 」の珠は植物を急激に成長させて木の戦士を作れて、ヴィーナスの「あゆ 」の珠は精霊などと話すことができました。ウラナスの「わかさぎ 」の珠は突風を起こしたりしましたが、プルートの「さめ 」の珠だけはどうしてもこれといった特別な力を引き出せませんでした。
 みんながきっと何かすごい力があるさとプルートを慰めました。


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