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『八猫伝』そのご
作:璃歌音 ここはツラス族が住むツラス村の中のジュピターの家。七人のキャムライが集まりました。 「なんだよぉ! 家に帰れるんじゃなかったのかよぉ!」ウラナスはいまだに文句を言っています。 「なぁ、ウラナス。お前はキャムライに選ばれたんだから、少しは自覚を持ったほうがいいぞ! リキャット島を救うという大きな任務を任されたんだから、もっと真剣に取り組め!」サターンはすでにいらいらモードに入っています。 サターンに叱られたウラナスはまだ不満そうでしたが、一応は静かになりました。 「さて、マーズたちがツサばあさんに聞いてきたことを整理するわね。まず、最近起きている〈おかしなこと〉は《ジアス》が原因だということ。そして、その《ジアス》というのはなんなのかよくわからないけど、しばらくしたらツサばあさんが突き止められるかもしれない。これでいいのね?」ジュピターが聞きました。 「うん。そのとおり」マーズが答えました。 七匹はジュピターの家、つまり姉のラストの家でもある木でできた家の、族長たちがいつも使っている会議室に集まって、それぞれが手に入れた情報を交換しあっていました。 マーズたちが聞いてきた《ジアス》については、ツサばあさんが時空妖精と話ができるようになるまでは何もできないので、とりあえずは全員でイレク湖の磁場について調べることにしま…… 「ちょっと待って下さい!」 マーキュリーです。みんながマーキュリーのほうを見ました。 「八匹目のキャムライのことはどうなるんですか? まだ見つかってませんよね?」 「……」残りの六人はぽかんとしています。みんな忘れていたようです。 「そうね。八匹目を探し出さなければ、任務を果たすこともできないかもしれないわね」ヴィーナスが言いました。 彼らはエイトキャムライのはずなのに、七匹しか選ばれていませんでした。 「やっぱりデス族から選ばれるのかな?」マーズが言いました。 このリキャット島には八つの部族がありました。いまのところ、一つの部族にひとりずつキャムライが選ばれています。しかし、八番目の部族、デス族はいつのまにか絶滅してしまっているのです。 「よし、俺とマーキュリーでデス族について調べてくるよ」サターンが意気込んで言いました。 「ちょっと! マーキュリーは常に私の補佐をするのよ! 離れ離れは嫌!」ヴィーナスが言いました。 「じゃあおまえも来い! ヴィーナス! よし! 三匹と四匹に分かれて別行動だ! どうだ、俺の考えは! 賢いだろ!」 「いや、ついさっきまで別行動してたし」ネプチューンがツッコミを入れました。 「それなら残った四匹は磁場について調べに彼のところに行きましょう」ジュピターが提案しました。 「彼って?」ネプチューンは不思議そうな顔をしていました。 ここはツラス村の北のはずれにあるガニメデ研究所。 「ガニメデ! 元気にしてた?」突然、ジュピターが大きな声を出しました。 「うおっ、びっくりした……ジュピターか。驚かすなよ」パソコンから振り返ったのは、この研究所の所長ガニメデです。他のツラス族と同じように三毛模様で、ヒトの国から持ってきた眼鏡をかけています。ぼさぼさの毛からは、研究に打ち込む熱心さがうかがえる猫です。 ツラス村には四匹の研究者がいて、東西南北四方向のはずれに研究所をかまえ、それぞれ磁場や時間、空間などを研究しています。 ジュピターたちは磁場を研究するガニメデに話を聞こうと、北のはずれのこの研究所までやってきたのです。 「いや、お前たちは研究に没頭すると周りが見えなくなるからちょっと声を張らないと聞こえないかと思ってさ……。ところで、あたしの伝書ネズミにメッセージを持てせて先に行かせたはずなんだけど、届いてるかい?」ジュピターは書類や本が散らばった部屋を見回しながら聞きました。 「こいつだろ? たいそう変わったことに巻き込まれたもんだなぁ……ジュピター?」ガニメデはどこからともなくネズミを取り出しました。ジュピターの伝書ネズミ、モクです。伝書ネズミというのは、伝書鳩のネズミ版、といったところでしょうか。 「そうそう、そいつだよ。わかりそう?」 「湖の水が一夜にしてなくなった……これは空間のゆがみと関係していそうだなぁ……。それに現場に行ってみないとなんとも言えないしな。エウロパも連れてイレク湖に行ってみよう。先に行ってるから、エウロパを連れてきてくれ」ガニメデは独り言をつぶやくように言いました。 今度はツラス村の西のはずれにあるエウロパ研究所。 ジュピターたちは空間を研究しているエウロパに会いに来たのです。 「エウロパ! 元気にしてた?」突然、ジュピターが大きな声を出しました。 「うおっ、びっくりした……ジュピターか。驚かすなよ」パソコンから振り返ったのは、この研究所の所長エウロパです。他のツラス族と同じように三毛模様で、ヒトの国から持ってきた眼鏡をかけています。ぼさぼさの毛からは、研究に打ち込む熱心さがうかがえる猫です。 「いや、お前たちは研究に没頭すると周りが見えなくなるからちょっと声を張らないと聞こえないかと思ってさ……。ところで、あたしの伝書ネズミにメッセージを持てせて先に行かせたはずなんだけど、届いてるかい?」ジュピターはやはり書類や本が散らばった部屋を見回しながら聞きました。 「ねぇ、ジュピター。さっきも同じやり取りしてなかった?」ネプチューンが聞きました。 「ん? 気のせい気のせい!」ジュピターはからからと笑って言いました。 「こいつだろ?めんどくせぇなぁ……」エウロパはやはりどこからともなくモクをとりだしました。 「そうそう。じゃあ、早速行くよ! ガニメデを待たすと面倒くさいから」 「わかったよ。ちょっと待て。準備するから。外で待っててくれ」エウロパはいかにも面倒くさいという仕草で立ち上がりました。 数分後、研究所の外にエウロパが出てきました。ものすごく大量の荷物を持っています。 「そんなに荷物がいるの?」マーズが聞きました。 「空間のゆがみを調べるんだろ? そりゃ、いろいろ要るんだよ」エウロパは久しぶりに外に出て、しかも空間について調査ができるので嬉しそうです。 「で、デス族について調べるって言ってたけど、どこに行くつもりなんだい?」ヴィーナスがなぜか嬉しそうに聞きました。 「うっ。そ、それはだなぁ……えっと……んが……ごぼ……へげ……」サターンはしどろもどろです。 「やっぱり考えてなかったのか……。まあいい。あたしについて来な!」ヴィーナスはさっさと歩き出しました。 「なあ、マーキュリー。お前あんなのとずっと一緒に居てめんどくさくないか?」サターンは声を潜めて聞きました。 「そうですか? とっても楽しいですよ」マーキュリーは笑顔で答えました。 「そうか……」 「ここはね、昔デス族が住んでたところよ。なにか手がかりがあると思うから、探してきて!」ヴィーナスは近くにあった大きな岩の上に座りました。 「? ヴィーナスも一緒に探すだろ?」 「嫌よ!そんなことしたら、私の美しい毛皮が汚れるでしょ!」ヴィーナスは突然怒り出しました。 「は? ……わかったよ。ああ、めんどくせ」 数分後、サターンがヴィーナスのところへ戻ってきました。 「なんにもねえよ!」 「そんなはずはないわ。まだ数分しか経ってないんだから、何も見つかるわけがないでしょ? 何か見つけてくるまで戻ってこないで」 「冗談だろ……」 すると、マーキュリーも戻ってきました。 「おもしろいものを見つけましたよ」 「ほらね? マーキュリーは有能よ。数分で手がかりを見つけてきたわ」 「冗談だろ……」 旧デス村の、家々が集まった場所。 その中のひとつに今も猫が暮らしている痕跡があったのです。 「ふぅ。ここに誰か住んでるみたいね。よし、しばらく待ってみましょう。この家の住人が戻ってくるでしょうから」 「わかりました」 「ああ、めんどくせ」 |
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