『八猫伝』そのに
作:璃歌音



 さて、戦士たちが選ばれました。
 リキャット島民全員が珠に触れ、選ばれずに一喜一憂した所を淡々と書いても仕方ありませんから、選ばれた戦士たちのところだけお伝えしましょう。

 まず一人目。シーキ族のネプチューン。
 ネプチューンはほっそりとしたアメリカンショートへアのメス猫です。彼女は、前にも話した通り、人間で言う「ギャル」なのです。

 ネプチューンが「かれい 」の珠に触れると、珠が青色に輝きだしました。
「ちょっとぉ! これって選ばれちゃったってことぉ? やばくない? きゃー! チョー嬉しいんですけどぉ!」

 二人目。カイング族のウラナス。
 彼はエイトキャムライのなかで唯一の子供です。カイング族の猫には翼が生えていて、空を飛べるのですが、ウラナスは気が強く、アクロバット飛行を好み、よく怪我をして両親に怒られています。

 ウラナスが「わかさぎ 」の珠を持つと、金色の光があたりを包みました。
「やっほぉ~い! 選ばれたぞぉ~い!」ウラナスが喜んでいるのを、ウラナスの両親は心配そうに見つめていました。

 三人目。ドサン族のサターンです。
 サターンはおおらかで、どこか抜けているような感じのおじさんのトラ猫です。え? ドドスタンに似てるって? ドサン族はみんなそんな感じなんです。

 サターンが「まぐろ 」の珠をつかむと、珠は緑色の光を放ちました。
「おし、ドドスタン、俺に任せとけ」

 四人目。ツラス族のジュピター。
 彼女はツラス族の族長ラストの妹で、みんなのリーダーという感じの三毛猫です。

 ジュピターが「さけ 」の珠に触れると、白色に輝きました。
「あらら、姉さん。なんだか大変な仕事を任されてしまったわ」

 五人目。フィレア族のマーズ。
 フィレア族は闘いに長けているのですが、特に彼女は時々姿を現す島の猛獣と戦わせたら、島民一の腕だ言われています。そのためか、常に剣を二本クロスして背中に担いでいます。

 マーズが「かつお 」の珠を持つと、珠は赤い光を放ちました。
「きゃはは! きれいな光!」彼女は、とても明るい性格をしたアビシニアンです。

 六人目。ゴールド族のヴィーナス。
 ヴィーナスはゴールド族の中でもひときわプライドが高く、人(猫)を見下したような言い方をする美しいロシアンブルーです。

 ヴィーナスが「あゆ 」の珠に触れると、珠は銀色に光りました。
「ふん! めんどくさいなぁ……」

 七人目。ウォート族のマーキュリー。
 ウォート族の猫たちは気が弱いので、しょっちゅうゴールド族にこき使われているのですが、マーキュリーは六人目のキャムライ、ヴィーナスにほとんど召使いのように扱われています。でも、彼にとってはたいして苦痛ではないようです。

 マーキュリーが「あじ 」の珠を持ち上げると、珠は黄色に輝きました。
「恐縮ながら、光栄な任務を果たさせていただきます」マーキュリーが言うと
「あぁ!もう!あんたの喋り方はいちいち堅苦しいのよ!」すかさずヴィーナスが金切り声を上げましたが、マーキュリーはただにこにこと聞いているだけです。どうしてあの声に耐えられるのでしょうか?

 八人目……と言いたいところですが、どの猫が最後の珠「さめ 」に触れても、何の反応も起こりません。
 そんななか、誰かが言いました。
「やっぱり、各部族に一人づつ選ばれているんだから、最後の一人はデス族から選ばれるはずだったんじゃないのか?」
 そう、前に話した「絶滅してしまった部族」というのはデス族というのです。
 しかし、その話はまた今度にしておきましょう。


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