『八猫伝』そのいち
作:璃歌音



「全員揃ったかぁぁ?」ドドスタンが自慢の声を張り上げます。
 すると、あちこちから「シーキ族、揃いました!」「カイング族、全員います!」「ドサン族、みんないるぜぇ!」などと、各種族の副族長たちが答えました。ここはリキャット島の中心にあり、全部族が集まれるほど広い〈タセンの広場〉です。
「それじゃあぁぁ、昨日ぉぉ、ツサばあさんからぁぁ、聞いたことぉぉ、話すぞぉぉ、実はなぁぁ、かくかくぅぅ、しかじかなんだぁぁ」ドドスタンが怒鳴ると、
「はあぁぁぁぁぁぁ???」広場じゅうの猫たち(説明する側である族長たちまでも)頭の上に疑問符が浮かんでいるような顔をしました。
「ちょっと、ドドスタン。貴方、説明する気があるの? ないの?」ビューテがイライラしながらドドスタンに詰め寄ります。
「そ、そりゃもちろんあるさ! なんでみんな理解してくれないんだ?」
「えっと、話が面倒くさくなりそうだから割り込むけど許してね。ドドスタンは『かくかくしかじか』って言葉をどう解釈しているのかしら?」ラストが聞くと、
「おお! 自分の伝えたいことを一瞬で伝えられる魔法の言葉だろ?」ドドスタンが自信たっぷりに答えました。
 その言葉にやはり広場じゅうの猫たち(もちろん族長も)がため息と共に肩を落としました。でも、この島の猫たちは優しい性格を持っているから怒ったりする猫はいませんでした。むしろ笑っているくらいです。
「ララ、むこうでドドスタンに『かくかくしかじか』について詳しく教えてあげてくれる?」ラストが言いました。
「分かったわ、ラスト。私に任せといて!」と、ララはドドスタンを広場の隅に引っ張っていきながら「かくかくしかじか」の説明を始めました。
「さて、ようやく本題に入れるわね」ラストがみんなの方に向き直り、ツサばあさんの予言について話し始めました。
 その間に、どうして族長たちがツサばあさんの所に行ったかについて書いておきましょう。

 ここ、リキャット島は世界の果てにある小さな小さな島なのですが、唯一普通の島と違う点は、この島が猫の島だということです。ここには、世界中から人間や他の生き物と共に暮らすことに疲れた猫たちが集まってきます。なぜかこの島では、猫たちは二本足で立って歩くのが普通です。もしかしたら、猫は元々二本足で歩く生き物だったのになにかの影響で四つ足になってしまったのかもしれません。世界中から猫が集まって来て自然に八つの部族にわかれ、それぞれ特色を生かした生活をしています。なかには、少しずつ進化していって翼が生え空を飛べるようになった部族や手足にひれがついて泳ぎがとても得意になった部族もいます。カイング族やシーキ族がそうです。しかし、ある一つの部族は原因はわかりませんが遠い昔に絶滅してしまいました。
 おっと、話がそれてしまいました。ツサばあさんの予言の話でしたよね。
 そんな猫たちが平和に暮らすこの島になにやら危険が迫ってきているのです。私にもまだよく分かりませんが、「ジアス」という名の恐ろしいものが原因のようです。どんな危険が迫っているのかというと、島のあちこちで自然が乱れています。うっそうと茂っていた森が一晩で砂漠に変わってしまったり、今まで谷だった所が海に沈んでしまったりと、不可思議な現象が続いているのです。
 そこで、この怪奇現象をどうにかできないかと族長たちが全島民を代表してツサばあさんに話を聞きに行ったということです。
 では、〈タセンの広場〉に話を戻しましょう。

「と、いうわけなの」ラストとララが偶然にも同時に話を終えました。
「なんと! それは驚きだなぁ」これはドドスタンです。
「すごくない? 選ばれたらチョ~かっこいいし!!」これはシーキ族のネプチューンです。彼女は人間でいうと『ギャル』のような猫なのです。
「じゃあさ、早く選ぼうよ! エイトキャムライを!」今度はカイング族のウラナスです。彼はまだ小さな子供なのですが、アクロバット飛行が大好きでとてもやんちゃな男の子です。
「ところで、どうやってエイトキャムライを選ぶのですか?」これはウォート族のマーキュリー。気が弱く、しょっちゅうゴールド族のヴィーナスという美猫にこき使われています。でも彼はそうやって働くことはそんなに苦痛ではないようです。
「この八つの珠が選んでくれるのさ」ルルトが答えました。
 そう、ツサばあさんの予言によって空から降ってきたあの八つの珠です。
「これから、全島民にこの珠に触れてもらってなにか反応が起きればそいつがエイトキャムライに選ばれるって寸法さ!」アクアが言いました。
さて、これから八人のキャムライ(言い忘れましたが、キャムライというのはリキャット島の古い言葉で『侍』という意味なのです。)が選ばれるわけですが、それはまた次の話としましょう。



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